表彰等

2024年度フェロー

日本ソフトウェア科学会は, ソフトウェア科学の分野における発展に対して特に貢献が顕著と認められる会員に対しフェローの称号を授与して, その功績を称える制度を2004年度に設けました.

フェロー称号の授与は2年ごとに行いますが, 第11回の選定にあたる今年度は, 7月22日に開催されたフェロー選考委員会の審議結果を受け, 8月5日の役員審議において2名の会員にフェローの称号を授与することとしました.

なお, 今回のフェロー選考委員会の構成は以下の通りです.

高田 広章(委員長), 大沢 英一, 大堀 淳, 加藤 和彦, 沢田 篤史, 柴山 悦哉, 玉井 哲雄, 千葉 滋, 本位田 真一, 丸山 宏

フェロー受賞者

五十嵐 淳 氏
門田 暁人 氏


五十嵐 淳 氏

略歴

2000年に東京大学より博士号を取得. 東京大学助手, 京都大学講師, 助教授を経て, 2012年より京都大学大学院情報学研究科教授. 2022年より同研究科研究科長. 日本IBM科学賞, 文部科学大臣表彰若手科学者賞, マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞, Dahl-Nygaard Junior Prize, 科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞, 日本ソフトウェア科学会基礎研究賞受賞. Asian Association for Foundation of Software運営委員長, IFIP TC2 WG2.11 メンバー. PEPM 2019 PC-Chair, APLAS 2016 PC-Chair, COP 13 PC-Chair, FOOL 2008 PC-Chair, FLOPS 2022 PC co-Chair.

受賞理由

五十嵐淳氏はプログラミング言語理論, 特にオブジェクト指向言語に関する研究における日本の第一人者である. 五十嵐氏は1999年にJava言語のモデルであるFeatherweight Javaを提案し, それを通してオブジェクト指向言語の基礎理論を展開した. また, Featherweight Javaを通して型総称性(Generics)の機構とそのコンパイル方式の定式化を行い, 現在ワイルドカードとして知られている機構の提案とその正しさの証明を行った. この定式化の対象となった型総称性とワイルドカードの機構はJava 5に取り入れられており, 五十嵐氏による研究がその設計と実装の理論的基盤を与えることに貢献している. これらの業績は国際的にも評価されており, 特にFeatherweight Javaに関する論文は, Google scholarによれば1700件以上の論文から引用されている. 五十嵐氏は, これらの貢献により日本IBM科学賞, 文部科学大臣表彰若手科学者賞, マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞, オブジェクト指向プログラミング研究の分野で国際的に最も権威があるDahl-Nygaard Junior Prizeを受賞した. また, 本学会からは2019年に基礎研究賞を受賞している. その後も五十嵐氏は, 静的型付けと動的型付けを単一の言語中で双方用いることのできる漸進的型付言語の研究や型情報にソフトウェア契約に関する情報を組み込んだ顕在的契約計算に関する研究, プログラム検証に関する研究等において重要な業績をあげると共に, 優秀な人材を輩出している. コミュニティへの貢献という面においても, Asian Association for Foundation of Softwareの運営委員長やACM SIGPLAN International Conference on Functional Programming, ACM SIGPLAN Workshop on Partial Evaluation and Program Manipulationの運営委員, ACM SIGPLAN Treasurer, PEPM 2019, APLAS 2016, COP 13, FOOL 2008におけるプログラム委員長, PPL 2007プログラム共同委員長を務めてきた. また五十嵐氏は本会の運営にも様々な貢献をしており, 日本ソフトウェア科学会第31回大会のプログラム委員長, 日本ソフトウェア科学会プログラミング論研究会主査を務め, 2020年から4年間理事を務めた.

本学会はこれらの顕著な業績を称え, フェローの称号を授与する.


門田 暁人 氏

略歴

1998年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了. 博士(工学). 同年同大学同研究科助手. 2004年同大学同研究科助教授. 2007年同大学同研究科准教授. 2015年岡山大学大学院自然科学研究科教授. ESEM 2007 Best Short Paper Award, ESEM 2012 Best Short Paper Award, 情報処理学会長尾真記念特別賞, ソフトウェア工学の基礎ワークショップ貢献賞など受賞.

受賞理由

門田氏は, 特に実証的ソフトウェア工学分野とセキュリティ分野において, 顕著な業績をあげ続けてきた. 実証的ソフトウェア工学分野では, ソフトウェア開発プロジェクトの管理に不可欠な, 工数見積もりや欠陥予測に対して機械学習を適用し, その精度を高めるための画期的な方法を数多く提案してきた. ソフトウェア開発は知識集約的産業であり, 開発者の人的要因を無視することはできない. ソフトウェア開発の品質と生産性を高めるために, いかにして人的要因を考慮すべきかについて, 革新的な視点から分析を行った成果を数多く発表してきた. 門田氏は産学連携にも積極的であり, 研究成果をソフトウェアの開発現場にフィードバックする活動にも長年取り組んできている. セキュリティ分野では主にソフトウェアの盗用検出と, ソースコードの難読化技術という, ソフトウェア開発の健全な発展に欠くことのできない技術を中心に研究に取り組んできた. 門田氏の研究成果は世界的に高く評価されており, これまでトップカンファレンス, トップジャーナルにおいて多数の研究成果を発表している. 国内の学会からも門田氏の研究成果は高く評価されており, 日本ソフトウェア科学会基礎研究賞, 情報処理学会ソフトウェア工学研究会卓越研究賞など多くの受賞経験がある. 門田氏は本学会の活動にも貢献しており, コンピュータソフトウェアの編集委員として長年活動するとともに, 2017年から4年間, ソフトウェア工学の基礎研究会の主査を務めた.

以上のように, 実証的ソフトウェア工学分野とセキュリティ分野の発展に対する門田氏の功績は顕著である. よって本学会はこれを称え, フェローの称号を授与する.